愛媛県警は14日、捜査車両に搭載されたカーナビ計38台がNHKと受信契約を結んでいなかったため、未払いの受信料が総額約644万円に上ることを発表した。テレビ愛媛などの報道によると、県警は今後、テレビ受信の必要のないカーナビについて原則撤去する措置を講じ、未払い分は支払う方針を示しているとのことだ。

この報道を受け、ネット上では議論が過熱している。警察車両でNHKの受信料を支払うことの是非や、NHKの受信料制度そのものに対する批判や疑問の声が相次ぎ、SNSやニュースのコメント欄には多くの意見が飛び交っている。

警察車両でNHKを視聴する機会はあるのか

今回の問題は、そもそも警察車両でNHKを視聴する機会があるのかという疑問を投げかけている。

まず、警察の捜査車両が業務中にテレビを視聴する可能性は低いと考えられる。カーナビのテレビ機能はあくまで付随的なものであり、警察官が業務中に車両内でテレビ番組を視聴することは考えにくい。特に走行中のテレビ視聴は道路交通法で禁止されており、実際の業務で活用される機会はほぼないだろう。

一方で、緊急時や災害時にはカーナビのテレビ機能が役立つ可能性も指摘されている。「震災時に停電で情報が途絶えた際、カーナビのテレビ機能は貴重な情報源になる。特に緊急車両ならば尚更必要ではないか」という声もある。しかし、このような場面がどれほどの頻度で発生するかは不透明であり、実際の警察業務においてどこまで必要かは議論が分かれる。

カーナビとNHK受信料契約の関係

NHKの受信料契約は、テレビを受信できる設備があるだけで契約義務が生じるという点が特徴だ。これは、放送法第64条に基づくものであり、カーナビのワンセグ機能も対象に含まれる。

しかし、個人の世帯契約では「テレビの台数に関係なく1契約」で済むのに対し、法人や事業所契約では「設置された機器ごとに契約が必要」となる。今回の愛媛県警のケースでは、この制度に基づき38台のカーナビそれぞれに契約義務が発生し、結果的に644万円もの未払いが生じた。

税金でNHK受信料を支払うことの是非

この問題がより大きな論点となるのは、警察車両の受信料支払いは税金で賄われるという点だ。税金を使ってNHKの受信料を支払うことが適切なのか、という疑問が多くの市民から寄せられている。

「警察が視聴しないテレビに受信料を支払うのは無駄ではないか」との批判が目立ち、多くの市民が、自分たちの税金がこのような形で使われることに違和感を覚えている。

また、会計検査院も過去に、農林水産省が業務用車両のカーナビにテレビ受信機能を導入し、受信料を支払っていたケースについて「適切ではない」と指摘しており、公的機関の受信料負担に対する監視の目が厳しくなっている。

NHK受信料制度に対する根強い不満

NHKの受信料制度自体にも、ネット上では不満の声が根強い。「公共放送としての役割はすでに終わっているのではないか」「NHKはスクランブル化して、見たい人だけが契約すればいい」といった意見が広がっている。

特に、事業所契約ではテレビが1台ごとに課金される仕組みについて、「家庭では台数に関係なく1契約なのに、法人や警察だけが台数分払わなければならないのは不公平だ」との指摘が多い。NHKは2023年10月に受信料の約1割値下げを実施し、訪問集金の廃止などの改革を行ったものの、未契約者への割増金制度(正当な理由なく未契約のまま放置すると通常の2倍の受信料を課す)を導入するなど、徴収強化の姿勢が際立っている。

また、スクランブル放送に対してNHKは一貫して否定的な立場を取り、「視聴率に左右されない公平な番組制作を維持するためには、現在の受信料制度が必要」と主張している。

NHK受信料を巡る今後の議論

今回の愛媛県警の件を契機に、NHK受信料の制度そのものに対する議論がさらに加速する可能性がある。特に、法人や官公庁の契約体系の見直し、税金を使っての受信料支払いの是非、さらにはスクランブル放送の導入などが改めて問われるだろう。

果たして、警察車両の受信料支払いは「法に基づく正当な行為」なのか、それとも「税金の無駄遣い」なのか。NHKのあり方を巡る国民的議論が再燃しそうだ。

関連する記事

ライター