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大阪・関西万博の開幕を目前に控え、会場の安全性に対する懸念から、修学旅行の行き先を変更する学校が現れた。

11日付の毎日新聞の報道によると、千葉県船橋市立のある中学校が、5月に予定していた大阪・関西万博への訪問を取りやめ、行き先をユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)に変更したという。4月6日に会場でメタンガスが検知されたことなどを受け、複数の保護者から学校に「安全な場所に変更してほしい」との要望があり、学校側が保護者会を開いたうえで決断したとのことだ。

共産党船橋市議団が「修学旅行先の見直し」を要望

大阪・関西万博をめぐっては、2024年3月に会場内の配管ピットでメタンガスが原因とみられる爆発事故が発生。さらに、今年4月6日にも、爆発下限界を超える濃度のメタンガスが検出された。こうした事態に対し、保護者や教育関係者からは安全性を不安視する声が高まっており、校外学習に反対する署名活動も起きている。

4月8日には日本共産党船橋市議団が船橋市長および教育長に対し、「大阪・関西万博を修学旅行の行き先とすることを見直すように求める緊急要望書」を提出していた。
要望書では、昨年3月の爆発事故や4月6日のメタンガス検知、災害時の孤立リスク、入場混雑や熱中症対応の困難さなどを挙げ、学校の安全配慮義務が果たせない恐れがある以上、修学旅行の行き先から大阪万博を外すよう強く求めている。

要望書を提出した日本共産党船橋市議団のかなみつ理恵市議はXで、「主催者の言う『安全』を信じられない状況であること。万一のことがあってからでは遅いことなどを伝えました」と投稿し、見直しの必要性を訴えた。

阿部文科相「万博は学びの多い場」

こうした声が広がる中、阿部俊子文部科学大臣は11日の閣議後記者会見で、記者から「メタンガス検知を受けて保護者や教員の間で懸念が広がり、校外学習に反対する署名も起きている。修学旅行先として大阪万博を活用する方針について、大臣としての教育的意義と安全性に関する見解を伺いたい」という趣旨の質問を受けた。

これに対し阿部大臣は、「万博は『いのち輝く未来社会のデザイン』というテーマのもと、子どもたちが命やSDGsの達成の取り組み、世界の多様な文化、次世代の技術・社会システム等を体感できる、学びの多い場である」と述べ、万博の教育的意義を強調。

その上で、「修学旅行等における事故防止・安全確保の徹底は来場にあたっての不可欠の前提」とし、「経済産業省からは、メタンガス事案を受けて協会が追加対策を講じ、会期中の安全対策に万全を期すと聞いている」と説明。「文科省としては引き続き、安全確保の徹底について関係省庁を通じて要請をしていきながら、都道府県教育委員会等を通じて情報提供と対応にしっかり努めていきたい」と語った。

ネット上は学校の判断に「英断」「妥当」賛同の声多数

今回の中学校の決断は、ネット上で大きな反響を呼び、様々な意見が交わされている。

「これは英断。安全第一」「生徒も喜ぶ、学校関係者も安堵。まさに正しい判断」「事故が起きてからでは遅い。予防的判断は当然」「万が一何かあったら学校は責任取れないし、妥当」などと学校の決断を支持する声が多く目立った。

また、USJへの変更については、「生徒も喜ぶ」「USJになって狂喜乱舞するわ」「絶対USJの方がいい思い出になる」といった共感の声が多数上がり、「面白いかどうかもわからない万博パビリオンに並ばされるより、確実に楽しさが担保されているテーマパーク行きたい」と、多くの中学生にとっては万博よりもUSJの方が魅力的だろうという見方が大勢を占めているようだ。

一方で、「修学旅行の意義」を問う声も少なくない。「USJで何を修学するのだろうか」「『修学』なら万博の方がいいと思うけど」「USJで何を学ぶのだろうか?USJは大人になってからでも行けるし、万博は今だけ」といった意見や、「遊びではなく、ちゃんと学べる所へ行く方が良いのでは?」などと、テーマパークへの変更を疑問視する声も上がっている。

その他、「災害時の対応力も不安。修学旅行先として万博はまだ早すぎる」「USJは過去の運営実績もあり、リスク対応も明確」と、運営体制そのものへの信頼感の違いを指摘する声もある。

今回の中学校の判断が先例となり、今後、全国各地で修学旅行の行き先を見直す動きが広がるのか、注目が集まる。

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