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朝の目覚めに欠かせない一杯のコーヒー。しかし、この日常的な習慣が、実は服用している薬の効き目に大きな影響を与えたり、思わぬ副作用を引き起こしたりする可能性があることをご存知でしょうか。

キングストン大学の薬学実践上級講師で薬剤師のディパ・カムダー氏が、コーヒーと薬の相互作用について詳しく解説しています。

意外と多い!コーヒーと相互作用する薬の種類

カムダー氏によると、カフェインは中枢神経系を刺激する作用を持つため、様々な薬と相互作用を起こすといいます。以下に、コーヒーと薬の相互作用について知っておくべきポイントをまとめます。

1. 風邪薬・インフルエンザ薬

カフェインは中枢神経を刺激する作用があり、風邪薬によく含まれるプソイドエフェドリン(例:スーダフェド)も同様の刺激作用を持ちます。これらを一緒に摂取すると効果が増幅し、神経過敏、不眠、頭痛、動悸などが起きやすくなります。

また、ADHD治療薬(アンフェタミン系)や、喘息治療薬テオフィリンもカフェインと化学構造が似ており、併用で副作用のリスクが上昇します。

2. 甲状腺薬(レボチロキシン)

レボチロキシン(甲状腺機能低下症の治療薬)は服用タイミングが非常に重要です。コーヒーを飲むタイミングが早すぎると、薬の吸収率が最大50%低下することがあるとされています。

これはカフェインが胃腸の動きを活発にし、薬が吸収される前に体外へ流れてしまうからです。液体製剤ではこの影響が少ないですが、錠剤では注意が必要です。

同様に、骨粗しょう症治療薬(ビスホスホネート系)も空腹時に水で服用し、30~60分は食事やコーヒーを避けるべきとされています。

3. 抗うつ薬・抗精神病薬

カフェインと精神疾患治療薬の相互作用は複雑です。

SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬/例:セルトラリン、シタロプラム)は、カフェインが胃内で薬に結合し、吸収を妨げる可能性があります。

TCA(三環系抗うつ薬/例:アミトリプチリン、イミプラミン)は、肝臓のCYP1A2酵素で代謝されるのですが、この酵素はカフェインも分解するため、代謝の競合が起こり、薬の副作用が強まる/カフェインの興奮作用が持続する恐れがあります。

抗精神病薬クロザピンも同じ酵素で分解されるため、コーヒー2〜3杯で血中濃度が最大97%増加したという研究もあります。

4. 鎮痛薬

一部の市販鎮痛薬(アスピリンやパラセタモール)にはカフェインが添加されています。カフェインは胃の排出を早め、胃酸を増やすことで薬の吸収を早める働きがあります。

これにより鎮痛効果の発現が速くなることもありますが、胃の不快感や胃潰瘍のリスクが増えることもあります。大量のカフェインを他から摂る場合は注意が必要です。

5. 心臓病治療薬

カフェインは血圧や心拍数を一時的に上昇させます。高血圧や不整脈の治療薬を服用している人にとっては、薬の効果を打ち消す可能性があるため、コーヒーの摂取に注意が必要です。

とはいえ、すべての心疾患患者がコーヒーを避けなければならないわけではありません。自身の症状や薬の効き方を観察し、必要であればデカフェを選ぶのが賢明です。

安全にコーヒーを楽しむために

カムダー氏は、薬とコーヒーの相互作用を防ぐための具体的な対策を以下のように提案しています。
・レボチロキシンやビスホスホネートは空腹時に水で服用し、30〜60分はコーヒーを控える

・風邪薬、喘息・ADHD治療薬はカフェインの刺激を増幅させる可能性があるため慎重に

・抗うつ薬・抗精神病薬・高血圧薬を服用中の人は、カフェイン摂取について医師に相談を

・落ち着かない・不眠・動悸などの症状があれば、カフェイン摂取量を見直す
人によってカフェインへの感受性は大きく異なります。1杯で動悸がする人もいれば、3杯飲んでも平気な人もいます。自分の体の反応を観察し、気になることがあれば医師や薬剤師に相談することが大切です。

たった一言相談するだけで、副作用や治療効果の低下を防げるかもしれません。心おきなくコーヒーを楽しむためにも、薬との付き合い方を見直してみましょう。

This article is translated and republished from The Conversation under a Creative Commons license.
Original author: Dipa Kamdar (Kingston University)
Source: https://theconversation.com/coffee-can-interfere-with-your-medication-heres-what-you-need-to-know-256919

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