静岡県議会は3月17日、富士山の登山者から1人4,000円の入山料を徴収する
静岡県富士登山条例案を可決した。

これにより、富士宮口、御殿場口、須走口の3つの登山ルートに係員を配置し、1人4000円の入山料を徴収する。入山料は運営管理や安全対策、環境保全のために使用される予定だ。

また、弾丸登山と呼ばれる無計画な夜間登山による事故を防ぐため、山小屋の宿泊予約をしていない登山客については午後2時から翌日午前3時まで入山を規制する。

山梨県と入山料が統一

山梨県では、2024年の夏山シーズンから1人2,000円の通行料を徴収していたが、2025年夏にはこれを4,000円に引き上げることを決定している。今回の静岡県での条例可決により、両県で入山料の統一が図られ、登山者の安全確保と環境保全の取り組みが進むことが期待される。

ネットの反応は賛否両論

ネットでは、「環境保全のためには入山料はやむを得ない」という意見がある一方、「高すぎる」という批判も多く見られた。「4,000円じゃ安すぎる。環境保全やレスキュー関連に予算を当てるためにももっと課すべきだ」という意見や、「海外の観光地に比べればむしろ安い。富士山の価値を考えれば妥当」とする声もあった。

また、「弾丸登山を規制するのは安全面で正しい判断」と評価する声もあり、一方で「マナーの悪い外国人観光客が問題。日本人には割引を設けるべきだ」という意見もあった。

さらに、「徴収されたお金の使途は透明性を確保し、環境保全や登山者の安全対策にしっかり使ってほしい」との声もあり、使途の明確化が求められている。

パブリックコメントでの意見と県の見解

なお、本条例制定に先立ち県が実施したパブリックコメント(意見公募)では、多岐にわたる意見が寄せられていた。

とりわけ、「入山料は、外国人は10,000円~15,000円、国民は2,000円が妥当と考えます」「1人一律4,000円ではなく、大人と子どもで区別してもよいのではないのでしょうか」など、登山者の属性により金額に差異を求める意見が多く見られた。

これに対し県は、「今回の条例案における入山規制に関する経費は、年齢や居住地などに関わらず等しく生じると考えており、入山料に差は設けない方針です」と明言。一方で、外国人料金の設定については「今後も他地域の状況を踏まえ、引き続き検討する」とし、また、学生の料金については「教育課程に基づく教育活動については、入山料を減免する方向で検討してまいります」と柔軟な姿勢を示した。

また、「4,000円の徴収は高すぎる」「この金額はどのような試算に基づくのか」との金額そのものに対する質問に対し、県は「入山料については、静岡県における五合目以上に立ち入る登山者の安全対策・富士山の環境保全に資する事業や、新たに導入する規制手続の運営経費を積算し、五合目を通過する登山者見込数で割って4,000円を算出しております」と返答している。

さらに、「山梨県の関係者向け説明会では、静岡県と山梨県での料金の二重取りを避けるべきだと説明があった。両県で調整し、重複徴収を避けてほしい」との要望に対しては、「登山者が両県で重複して料金を負担しないよう、山梨県と調整を進めている」とした。

今後の課題と展望

条例は2025年5月9日から施行される。今後は、登山者への周知や徴収体制の整備が課題となる。県は、適所に必要なスタッフを24時間配置し、対象者からは漏れなく徴収できるような体制を整えることに加え、事前にWebシステムを通じた入山料の納付を促進し、現地でもキャッシュレス決済を導入する方針だ。

富士山の自然環境と安全を守るための今回の措置が、今後どのような効果をもたらすのか注目される。

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