(18315)

子どもが眠るベッドやマットレスが、じつは知らないうちに有害な化学物質を放出しているかもしれない――。そんな驚くべき実態が、カナダ・トロント大学などの研究チームによる最新調査で明らかになった。

科学誌『Environmental Science & Technology Letters』に発表されたこの研究は、トロントとオタワに住む6か月〜4歳の子ども25人を対象に実施された。

調査では、子どもたちの寝室の空気や、マットレス、寝具周辺から放出される化学物質を測定した。その結果、プラスチック製品を柔らかくするために使われるフタル酸エステル類、難燃剤に用いられる有機リン酸エステル類、繊維製品の紫外線劣化を防ぐ紫外線吸収剤など、多様な半揮発性有機化合物(SVOCs)が検出された。

これらの化学物質は、時間とともにマットレスや寝具から空気中に放出され、子どもたちが吸い込んだり、肌に触れたりする可能性がある。特に、マットレスが古くなるほど、こうした有害物質の濃度が高まる傾向も確認された。

さらに、測定結果を比較したところ、寝室全体の空気に比べて、子どもが実際に寝ている直近の空間では、これらの化学物質の濃度が明らかに高いことがわかった。とくに、マットレスや寝具そのものが大きな発生源になっているとみられる。

研究チームは、幼い子どもは大人に比べて呼吸量が多く、肌もデリケートなため、こうした有害物質への感受性が高いと指摘。曝露を減らすため、寝具や衣類をこまめに洗濯すること、ベッド周りに置く物(ぬいぐるみやおもちゃなど)をできるだけ減らすことを推奨している。

また、現在のカナダの規制では対象外となっている可塑剤についても、マットレスや寝具への使用制限を強化すべきだと提言。「子どもたちが毎日長時間を過ごす睡眠環境の安全性を確保するために、より厳格な規制と、メーカー側の責任が求められる」と、研究者たちは警鐘を鳴らしている。

出典:
Sara Vaezafshar, Sylvia Wolk, Victoria H. Arrandale, Roxana Sühring, Erica Phipps, Liisa M. Jantunen, Miriam L. Diamond
「Young Children’s Exposure to Chemicals of Concern in Their Sleeping Environment: An In-Home Study」https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acs.estlett.5c00051

関連する記事

ライター