イギリスで優れたミステリー作品に贈られる「ダガー賞」の翻訳部門に、日本の作家・王谷晶氏の小説『ババヤガの夜』が選ばれた。日本人としては史上初、アジアの作家としても史上2人目の快挙である。
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英国推理作家協会は、日本時間2025年7月4日(金)早朝、2025年のダガー賞〈翻訳部門〉の受賞作として、王谷晶『ババヤガの夜』英訳版(The Night of Baba Yaga)を発表した。翻訳はサム・ベット氏。

「ダガー賞」は1955年創設の歴史ある文学賞で、英国推理作家協会が主催。翻訳部門では、英国で出版された英語翻訳作品に対して授与される。

本作『ババヤガの夜』は、二度読み必至、圧巻のシスター・バイオレンス・アクション。2020年「文藝」秋季号の特集「覚醒するシスターフッド」にて全文発表され、同年10月に単行本化、2023年5月に文庫化された。

単行本/文庫/電子書籍の国内累計部数は、2025年7月4日現在で3万8000部を突破。英米韓ではすでに翻訳刊行されており、今後はドイツ・イタリア・ブラジルでも出版が予定されている。

■王谷晶『ババヤガの夜』作品紹介

喧嘩しか取り柄のない新道依子は、ある日、関東有数の暴力団の屋敷に連れてこられ、組長の一人娘である短大生の送り迎えと護衛を命じられる。気の合わないふたりの奇妙な同居生活のなかで、依子はこの家に隠された、ある秘密に触れていく。
物語終盤で明かされる大胆不敵な大仕掛け。繊細かつ哀切に描かれる、女と女の名前のつけられない関係――
一気読みの直後、二度読み必至。ラストで明かされる衝撃の仕掛けとは?
圧巻のシスター・バイオレンス・アクション!

著者:王谷晶
仕様:文庫判/並製/208ページ
初版発売日:2023年5月9日
税込定価:748円(本体価格680円)
ISBN:9784309419657
装画:寺田克也
解説:深町秋生
出版社:河出書房新社
Amazon:https://amzn.to/4ksOedL
Kindle版:https://amzn.to/4nx8yxl
楽天ブックス:https://a.r10.to/hkJ8mH

■海外・日本のレビューまとめ

「めちゃくちゃブッ飛んでて最高に血まみれ、これはヤバかった!『キル・ビル』とか『ジョン・ウィック』っぽい雰囲気の本を探してるなら、もうこれ一択」――@thespookybookclub
「怒り、ユーモア、スリル満載」――The Times紙
「激しい暴力と素晴らしい優しさが交互に訪れる」―― The Guardian紙
「女の力を描いた、シャープでストイックな物語」―― Los Angeles Times紙
「手に汗握る、壊れないスリラー」―― Tokyo Weekender
「優しくも怒りに満ちたこの犯罪サーガは、オウタニの次作を待ち望まずにいられない」―― Publishers Weekly

日本の著名人レビュー

「どんどこ血が脈打ってくる。」――北上次郎(「本の雑誌」2021年1月号)
「まず、この世界を壊せ。話はそこからだ、と作者は言う。」――杉江松恋
「シスターフッド文学をあらゆる意味で刷新するシスターバイオレンスアクション!」――鴻巣友季子
「もう一気に読了して最後はナルホド! と唸った。」――大槻ケンヂ
「友情でも愛情でも性愛でもない、ただ深いところで結ばれたこの関係に、名前など付けられない。」――宇垣美里

【王谷晶さんの授賞スピーチ全文】

まずは審査員の皆さん、この国で私の本を出版してくださったFaber&Faber、アメリカで最初の英語版を出してくれたSoho Press、タトル・モリ エイジェンシー、印刷製本、流通、販売してくださった皆さん、そしてこの本を手に取って大切な時間を使ってくれた読者の皆さんに大きな感謝を捧げます。

今は、とにかく驚いています。完全に混乱しています。「モンティ・パイソン」のスケッチに出ている気分です。昨夜は「フォルティ・タワーズ」みたいな素敵なホテルに泊まりましたし。何より感謝したいのは、翻訳のサム・ベットさんです。この本は日本のローカルな要素がたくさんあります。サムさんはそういった作品の細やかな部分をひとつひとつ大切にしてくれて、そのうえで素晴らしい英訳を作り上げてくれました。本当にありがとうございます。私はミステリ専門の作家ではありません。様々な種類の作品を書きます。日本では作品と作家は細かくジャンル分けされているので、私は曖昧な作家と思われています。曖昧であることは私の作家としてのテーマそのものです。自分の曖昧さを受け入れ、他人の曖昧さを認めることが世の中をよりよくすると信じています。この作品の主人公たちも、はっきりとラベリングできない関係と人生を手に入れます。これは何よりも私が読みたかった要素です。同時にこれはバイオレンス満載の物語でもあります。ここにお集まりの皆さんは私と同じく血や殺人や犯罪や、復讐や暴力が大好きな方々だと思います。もちろんフィクションの。私はバイオレンスフィクションの愛好家ほど、よりさらに現実世界の平和を願い行動しなければいけないと思っています。リアルの暴力が溢れている世界では、フィクションの暴力は生きていけません。歴史が物語っています。これからも首無し死体やパーティでの毒殺を楽しむためにも、今回頂いた栄誉を、世界の平和のために少しでも役立てたいと思います。Thank you.

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