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2025年に入り、「弁当店」の倒産が過去最多のペースで推移している。帝国データバンクの調査によると、2025年1月から5月までの倒産件数は22件に上り、前年同期の21件を上回った。このままのペースが続けば、年間で過去最多を更新する可能性がある。

経営を圧迫する複数の要因

弁当店の経営環境は、多岐にわたる課題に直面している。まず、会議や法要、冠婚葬祭といった大口の受注や高単価な弁当の需要が縮小していることに加え、テレワークの普及により事業所向けのランチ弁当需要も減少。法人向けをメインとする仕出し弁当や日替わり弁当の商圏が縮小傾向にある。

さらに、2021年以降は原油高や円安、ウクライナ情勢の影響を受け、鶏肉、食用油、小麦粉といった食材価格が高騰。長時間労働や早朝対応が必要な業務特性から、調理師などの採用も難航し、人手不足も深刻化している。

こうした状況に追い打ちをかけているのが、近年特に顕著な「コメ」の高騰だ。帝国データバンクの調査によれば、コメ価格の高騰が事業継続を断念させるケースが目立ち始めているという。

価格転嫁の難しさと二極化する収益状況

コスト高を受けて弁当店も価格転嫁を進めてきたが、スケールメリットを活かせる大手と、地域密着型の「街の弁当店」との間で収益力の格差が拡大している。

2024年度の弁当事業を手がける企業の損益状況を見ると、45.0%が増益となった一方で、減益が21.7%、赤字が30.2%を占めた。赤字・減益を合わせた「業績悪化」の割合は51.9%と半数を超え、業界内で二極化が進んでいる実態が浮き彫りになった。

特に、原価構成に占める食材費の割合が高い中小の弁当店では、コメ価格の高騰が直接的に採算悪化に繋がり、減益や赤字に陥るケースが目立った。また、スーパーやコンビニエンスストアが提供する500円以下の「ワンコイン弁当」との価格競争も激化しており、十分な値上げができずに収益力が低下した弁当店も少なくない。

複雑な「コメ」事情と今後の経営戦略

足元では、安価な備蓄米が市場に放出されているものの、「品質維持のためには新米を使いたい」という弁当店の声もあり、コメを巡る思惑は複雑だ。コスト削減と品質維持の両立を目指し、ご飯の盛り付け量を一定にする、廃棄ロスを減らすといった取り組みや、食品スーパーへの出品など新たな販売機会を模索する動きも見られる。

しかし、多くの弁当店では食材や包装資材の価格上昇分を販売価格に十分に転嫁できておらず、採算面での課題は依然として残されている。物価高で消費者の価格へのシビアな目が強まる中、いかに弁当の「採算性」を確保していくか、各弁当店の経営戦略が今後ますます問われることになるだろう。

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