ジャニーさん、メリーさんがステージ上でタレントと歌い涙を流した日

ジャニーズ事務所のジャニー喜多川氏、通称ジャニーさんといえば、多くの人が名前を知る著名人だが、メディアに顔を出すことはほとんどなかった。顔写真は、「ギネスブック2012年版に「最も多くのコンサートをプロデュースした人物」として掲載するために撮影した写真が繰り返し使用されている。その写真も、VANSONのキャップを目深にかぶり、サングラスをかけ、目がはっきりと写っていないものだ。それは、写真嫌いだったこと、裏方に徹するため、というジャニーさんならではの哲学があったからだろう。表舞台に一切出なかったジャニーさんだが、事務所の初期にはタレントと一緒にステージに上っている。

2019年9月4日、東京ドームで開催された「ジャニーさんのお別れ会　関係者の部」には、退所したOBも多く足を運んだ。初代ジャニーズのバックダンサーとして、1967年にレコードデビューした4人組グループ、フォーリーブスのメンバーである江木俊夫とおりも政夫は、福島市と郡山市でのコンサート出演のためお別れ会には参加しなかったが、「直撃LIVE　グッディ！(フジテレビ系)」に二人揃って出演し、取材に応えた。

二人はフォーリーブスとして事務所時代を振り返り「当時は、ジャニーさんとメリーさんしかいない、兄弟でやっていた事務所。ジャニーさんは現場に来てああしてこうしてと指図して、メリーさんは衣装を縫ってくれた（おりも）」、「ジャニーさんは車を運転したり、合宿所で料理を作ってくれた。メンバーの一員で5人目のリーダーだった（江木）」と語った。

フォーリーブスはNHK紅白歌合戦に出演するなど人気を博したが、1978年に解散した。「ジャニーさんはメンバーの一員のようなものだったから、解散するとき、ジャニーさん、メリーさんもステージに上がって、肩をくんで歌って泣いたりした」と江木。おそらく、お二人がステージに上ったのは最初で最後のことだろう。「ステージに上がるなんて、今考えるとありえない」と懐かしんだ。

フォーリーブスは、解散から24年後の2002年に再結成。メンバーのうち、青山孝（のちに孝史と改称）、北公次が逝去したが、現在も江木とおりもでフォーリーブスとして活動を続けている。おりもは、2018年に20数年ぶりに日生劇場でジャニーさんと会い、「少年たち」のミュージカルを見て、ジャニーさんといろいろ話をしたこともブログで語っている。

ジャニーさんと所属タレントの関係を家族に例えるが、当時、フォーリーブスとは少人数の仲良し家族として濃密でアットホームな関係を築いていたのだろう。それでも、芸には厳しく、一生懸命に手作り、手探りで現在のジャニーズエンタテインメントの基盤を作っていた時代と言えるだろう。

〈ライター　／佐藤ジェニー〉